個人テニスレッスン専門の「プラテニ」で、20年以上ひたすらマンツーマンレッスンを続けてきた浜田昌之です。
今回は、初めての方とのレッスンで、私が最初の5分間に何を見ているのかを書いてみようと思います。
これ、本当はあまり書かない方がいいのかもしれません。
なぜなら、受講する方が、「ここを見られているんだ」と意識してしまうと、普段の自然な動きが見えにくくなるからです。
私が見たいのは、むしろ意識していないときの反応なんです。
■ 最初はミニタッチラリーから
もちろん、コートに入る前にはお話を聞きます。テニス歴、現在困っていること、どんなプレーをしたいのか。
そしてオンコートに入ると、最初にミニタッチラリーをすることが多いです。
このとき私は、いきなり「フォームがどうだ」「テイクバックがどうだ」というところだけを見ているわけではありません。
最初に見ていることの一つが、ボールが来たとき、自然に身体が反応しているか。特に、自然に足が出てボールへ向かっているかを見ています。
■ 得意なショットは、自然に足が出る
例えばフォア側にボールを送ります。得意なショットなら、多くの場合、「右足を出して」「ここで身体をターンして」なんて考えなくても、自然にボールへ向かいます。
ところが苦手なショットになると、一瞬足が止まることがあります。
- 「ちゃんと打たなきゃ」
- 「またミスするかもしれない」
- 「フォームをこうしなきゃ」
そんな意識が先に入ってしまう。すると、本来なら自然にできるはずの「ボールが来たから、そこへ行く」という動作が難しくなることがあります。
長く個人レッスンをしていると、この小さな反応から気づくことが結構あります。
■ 歩くときに「右足、左足」と考えない
これは歩く動作と少し似ています。普段歩くとき、「まず右足を出して、そのとき左手を前に出して……」なんて考えませんよね。
逆に、そんなことを一つひとつ考え始めたら、歩きづらくなると思います。
もっと分かりやすく言えば、冷蔵庫に大好きなケーキが入っているとします。そのケーキを取りに行くとき、「よし、まず右足から出そう」なんて考えません。食べたいから、自然に冷蔵庫へ向かいます。
私はテニスでも、まずこの感覚を大切にしています。
■ 「ボールが来たから行く」でいい
赤ちゃんが欲しいものを見つけて、それを取りに行こうとするときも同じです。「右足をこうして、左手をこうして」とは考えていません。
欲しいから向かう。
テニスも、まずは、ボールが来た。だからボールへ向かう。それくらい自然でいいと思っています。
そして、できればそこには「楽しい」という感覚があってほしい。楽しいからボールを追う。打ちたいからボールへ向かう。苦しむためにボールを追いかけるわけではありません。
苦手なショットほど、いろいろなことを考えすぎてしまいます。だから一度、「ただボールへ自然に向かう」ところまで戻してあげる。それだけで動きが変わる方もいます。
■ では、理屈はいらないのか?
ここは誤解してほしくないところです。私は、理屈が必要ないと言っているわけではありません。むしろ、ショットの再現性を高める段階では理屈はとても重要だと思っています。
- 身体のターン
- 膝の使い方
- 股関節への乗り込み
- 準備のタイミング
- 打点
- ラケット面
- スイング
こうしたものを整理して、同じ動作を繰り返せるようにする。特に、すでに得意なショットをさらに安定させたい場合には、この工程は非常に有効です。
ただ私は、自然に反応することと、理屈で再現性を高めることは、順番が違うと考えています。
最初から全部を頭で考えて動こうとすると、かえって身体が動かなくなる人もいます。まず自然に動ける。そのあとで、正確性を高めるために動作を整理する。この順番です。
■ 最初の5分で上手い・下手を判断しているわけではありません
ここも大事です。最初の5分間で、「この人は上手い」「この人は下手だ」と評価しているわけではありません。
私が知りたいのは、その人が考えすぎていない状態では、身体がどう動くのか。です。
なぜなら、個人レッスンを長く続けていると、フォームの問題に見えて、実はフォームだけの問題ではなかったというケースに何度も出会うからです。
何年も悩んでいるショットほど、「もっと正しいフォームにしなきゃ」と考える前に、もっとシンプルなところへ戻った方がいい場合があります。
ボールが来た。自然に足が出る。ボールへ向かう。まずはそこからです。
■ 20年以上個人レッスンを続けてきて
マンツーマンレッスンを長く続けていると、同じ「フォアが苦手」という悩みでも、原因が一人ひとり全く違うことが分かります。だから私は、最初から答えを決めつけないようにしています。
- 話を聞く
- 実際に打ってもらう
- 意識して作ったフォームだけではなく、無意識に出る反応を見る
最初のミニタッチラリーで私が見ているのは、そんな小さな部分です。
個人レッスン専門で20年以上。何千回、何万回と最初のラリーを繰り返してきたからこそ、今ではこうした「自然な反応」を以前より大切に見るようになりました。
技術を直す前に、その人が本来持っている自然な動きを見る。それが、私が最初の5分間でしていることの一つです。
プラテニ代表
浜田昌之
