ストローク (上級トーナメントクラス選手)【吉田コーチ編】
ストローク(上級トーナメントクラス選手、市民大会本選クラス)【吉田コーチ編】
今回の実践プラテニは、吉田将彦コーチからです。
吉田コーチは、日本のナショナルエリアコーチとしての活動のみならず、海外数カ国でもコーチ研修や指導者講習会を担当してきました。
また、今でもそうですが、様々な世界トップ選手を育てた指導者から得てきたノウハウを、特別にこの場でお伝えいただきます。
じっくりと楽しんでお読みください。かなり今後のテニスに役立つと思います。
今日の「実践プラテニ」のテーマはストロークです。
「ストローク練習のウォーミングアップ」で、皆さん同士でする時に注意することってなんですか?
ミニラリーを例に取ってみましょう。
サービスライン上で、その日の1時間ないしは2時間のテニスを楽しみに、ウォーミングアップを始めますよね?
皆さん、どのへんを注意してラリーしますか?
フォーム?
フットワーク?
打点?
フォロースルー?
フィニッシュの形?
この中で「打点」に注意してる方多いですよね?
私もそうでしたし、今でも他のコートの方がしているミニラリーを拝見しますが、
「カシュッ」という感じで、ボールにスピンを乗せながらミニラリーを楽しんでおられる方。
これ、要注意です!
私の受講者の方で、この動きを意図的に強調される方がいれば、
「回転をかけずに打ってください。」
とお伝えし、多少サービスラインをオーバーしても、回転量の少ないミニラリーをしてもらいます。
ミニラリーという意識というより、お互いがサービスラインとベースラインの間で無回転で打ち合う感じです。
(ただ、その日のテーマがショートクロスのアングル等、このような回転をかけることを目的にしている時を除きます。)
なぜか?
それは「ミニラリーでせっかく作る感覚を、効率的にベースラインラリーに生かしたい。」からです。
ある外国に、全国レベルの日本人選手をツアーに連れて行った時のことです。
私は、あるテニス強豪国のナショナルコーチと共に、10日かけて練習と試合(アンツーカー)でその選手にコーチングをしていました。
そのコーチは、日本の超有名な世界レベルのトッププレイヤーのヒッティングパートナーを勤めていた事もあります。
練習試合でボールが入らないその選手に、そのコーチは「手首を使って強烈な回転をかけろ!」と指示します。
私には、その選手に指導する他の時間が割り当てられているので。もちろんその場で私はそのコーチの邪魔はしません。
また、「強烈なスピン回転」自体は、テニスゲームにおいて非常に有効なツールです。
私もそのコーチも、国際テニス連盟レベル2コーチ(アジアで60人ほどしかいない)として、同じ指導ガイドラインを持っています。
この試験の一回の合格率は10%以下、行われる国によっては30人が受講しても合格者ゼロということもあるほどです。
10日間に及ぶ講義も試験も、全て英語で行われます。
その国際テニス連盟レベル2資格、そして世界的な選手と打ち合えるヒッティング能力を持つ、このコーチのアドバイス自体は「間違ってはいません」。
しかし、この選手にとっては、そのアドバイスされた「強烈なスピン回転」を試せば試すほど、練習試合で対戦相手に打ち込まれます。
そう、「強烈なスピン回転」がかえってその選手のボールスピードを落とし、そして急激な上下動のラケットワークは、フレームショットの原因にさえなっていたのです。
その選手はそのボールのクオリティーと、試合の結果に不満を隠しきれません。
アドバイスをしてくれたコーチが、他にも帯同していた選手の指導をする為にその場を離れました。
私はその時間を使い、その選手に違う観点からアドバイスをしました。
私のアドバイスは、
「ボールに回転をかけずに、私の指示する方向と高さにボールを打ちなさい。」
正反対の指導法です。幸いその選手は混乱する事なく、私の提言に同意をしてくれました。
私は、その選手に「その感覚」を意識させる為の数種類のプロセスを使いました。
結果、その選手のボールは面白いほどコートに入るばかりか、スピードも急激に上がっていきました。
私達、有資格指導者しかも国際テニス連盟から認定されたレベルの指導ガイドラインであっても、「テキスト通りに」「固定観念に縛られ」指導を行うと、大きな失敗をしてしまう事があります。
・サービスラインのすぐ近くに立ち
・サービスエリアの中に必ずスピンでボールを入れて
・急激に手首をワイパーのように使い
・フットワークとフォームを意識しながら打つ
という、「ストロークのウォーミングアップ」における一般的な常識や固定観念は、ベースラインやゲームシチュエーションでのストロークのクオリティーを著しく下げる事があります。
急激に手首を使う事でも、強烈な回転をかけることでも、ボールをやまなりに打つ事でもない、 ただ「回転をかけずに少しサービスラインをオーバーするようにウォーミングアップ」を始めてみてください。
ベースラインでの皆さんの「攻撃力」と「安定性」が変わるはずです。
次回もストロークについてお話をしたいと思います。